Ciao! (=´ー`)ノ⌒♪私自身あるいは困難な存在

■TMNETWORKとXJAPANが日々の糧εεε=(*ノ▽ノ)な佐野瑞希です、こんにちは。■音楽と、広範囲な意味での文学について綴っています。■現在は、一連の創作シリーズ『夢想と薔薇の日々』の更新がメインになっています。「おもしろかったー!」と思っていただける一日があれば幸いです。  ───遠い記憶をたぐり寄せると、どこまで遡っても自分の感性や思考のしかたが変わっていないなあと感じざるを得ない今日この頃。春、桜舞い散る日に。(2015.04.12改稿)

薔薇

◆ INFORMATION ◆
♦『夢想と薔薇の日々』リバイバルへは、カテゴリ別アーカイブからどうぞ!
----------
♦『夢想と薔薇の日々』の更新「定時」は8amです。
♦『夢想と薔薇の日々』<YOUR BREATH><きょうの夕ごはん>は3:30pmに公開します。
♦その他のカテゴリについては公開時間は決めていません。


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夢想と薔薇の日々<PERFUME ~香水〜>

『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。  

香水

帰ってきて真っ先に気が付いた。

───あれ?ヨシキが珍しい香水つけてる。


だけど、何系の香りなんだかわからない。
薔薇、、、もっと他の花?
フレッシュなフルーツたち?
いや、アールグレイ紅茶のベルガモットのようなスパイシーな香りも見え隠れしていて……何だろ、この不思議な匂い…?


…ヨシキ。

「は?」


素っ気ない返事に、一瞬ひるんでしまうけど。


…何の香水つけてんの?

「え〜教えなぁい!」

…すごい新鮮な匂いだよね。

「知らない♡」

…変えたの?

「だから教えないってばぁ!」

…なんだよー、ケチ。


ヨシキは、ベーっと舌を出して見せると、ダイニングルームを去っていってしまった。





· · • • • ✤ • • • · ·





───なんだ?今のツンデレみたいの。

ひとり残されて、俺は考え込んだ。
どうやら我が家のお姫様は、香りで俺の気を引こうとしているようだ。
それは確かなのだけれど。

これが、彼(彼女か?)の仕掛けたゲームなら、乗るしかないかなと思う。
しょうがない。
もしここで俺がアクションを起こさなかったら。
大泣きされるか怒鳴られるか───、どっちにしたってたまったもんじゃない。


俺は決心して、椅子を蹴って立ち上がった。
冒険に出かける勇者みたい、、、ちょっと得意になった。
救い出すべきは、かぐわしい香りを纏ったままこの我が家 しろ のどこかに隠れている、ツンデレお姫様で。


───でも、なんで香水なのかなあ。

考えあぐねていたら、ふと脳裏を、香水に関するひとつの名言がよぎった。
そうか、そういうことか…!と閃く。
体じゅうに香水を振りまいているヨシキの姿が、鮮やかに目に浮かんだ。

俺は静かにほくそ笑む。
お姫様のお目当てはわかった。
この直感は間違ってないはず。


…よしっ、待ってろよ! 


ヨシキとの来たる戯れを想えば、足どりは軽やかだった。

そう、愛のチカラは、いつだって全てに勝利するのだ。






∽勇者トシが手に入れた名言とは!∽

✼ ••┈┈••🌼••┈┈•• ✼

「香水はね、キスしてほしいところに
つけるものよ。」

マリリン・モンロー

✼ ••┈┈••🌼••┈┈•• ✼






香水













夢想と薔薇の日々2020《END》

あ~もうスミマセン!謝るよ〜!💦💦
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どうもありがとうございましたぁ😫🌹




【突発】夢想と薔薇の日々<日々徒然>10月21日深夜号

『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。

「診断メーカー」


・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・

I love you.をヨシキ風に訳すと、
『あなたの最期をください』です。
#shindanmaker

・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・


彼に見せたらね


「何これ?当たり前じゃん」


だって、、、

ちょっと!💦
誰かたすけて!笑


リアクションなさすぎて、おもしろくも何ともない
俺なんか結構、グサグサっと来たんだけどなぁ。


「おまえの死に際はおれのもんだ」って、フッツーさぁ、言う?
I love you. の代わりに?

非常にドラマティックかつロマンティックですけどね、あまりにもヘビーじゃないですか……???
言われたら引いちゃうよ、普通!
まったくもう。




けど彼と俺に限って。
そんなこと、ないのかもしれない。



俺の最期は、ヨシキのものだ。


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《END》 

*️⃣ひとこと後コメント
診断メーカーで出て思い付きました。 
ゴメンなさい!お遊びだから、お遊び!
次はマトモなの書きます。おやすみなさい

遅くにすみませんありがとう
TOSHI花畑







『夢想と薔薇の日々』リバイバル!<White × White St. Valentine's Day>

ホワイトデーも過ぎてしまいましたが、最近リクエストが多いので、このお話。
後に、ここかしこで重要な役割を果たすこととなる「デューク」が初登場するエピソードです。
デュークについては、このお話の伏線になる作品も含めて、まだ後日リバイバルします。

なんでね、今まで わたしが この話から目を背けてきたかと言うと、わたしにしてみれば これ、思い入れがありすぎて、滑った、失敗した、と思っている節があるんですよね。
いまだに恥ずかしいです。
だから、この頃になってリクエストが多いっていうのが意外で意外で。
まあ作品は独り歩きしますから、それならってことで、出しますけどね。

リバイバルも久しぶりですし、お時間ありましたらお楽しみください。
よろしくお願いします。


夢想と薔薇の日々
<White × White
St. Valentine's Day>
『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。



「今年はバラじゃないかんね♪」



数日前にヨシキが唐突に言った。


…え?何が?何の話!?

「バレンタインデーだよお~♡」



なんだ。
まだそんなこと考えてたのか。


…いいよ気にしなくて。ヨシキがいたら毎日バレンタインみたいなもん!


本気でそう返したのに、ヨシキはまるで聞こえなかったかのように、俺の曲のワンフレーズを口ずさみながらピアノの部屋へ引っ込んでしまった。

一体何を企んでいるのだろうと思いつつも、それ以上は聞かずに──…今日がまさにそのバレンタインデーで。




゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜



昼メシのあと、ヨシキは


「ちょっと行ってくるね!」


と言って飛び出していった。


どうせ『どこへ?』なんて聞いたって今日は無駄なんだろうなぁと思って、黙って一言で見送った。


…早く帰ってきなよ、…待ってるから。






だけど、ヨシキが玄関のチャイムを鳴らしたのはもう7時近くで、さすがに心配になって電話しようかと思っていた矢先だった。


…おかえり!どこまで行ってたの!

「うん…ただいま…」


ヨシキは、きれいにラッピングされた花屋の包みを抱えていた。

靴を脱ぎもせずに、彼はその包みを持ち上げて俺に押し付けた。


「はい…」

…あは!ありがとー!

「…ううん」


彼は俺の顔を見ることもなく、他には何も話さなかった。
そして、薄いコートを着たまま静かに二階へ上がっていってしまった。



───あれ?なんか様子が…。

気にはなった。
でも、一生懸命買ってきてくれたのだから…と、まずプレゼントを見せてもらうことにした。

ビニール袋を外すと、小さな観葉植物の鉢植えが現れて。


…わあ!これって!すごいよヨシキ!


なんとその鉢からは、真っ白いハートのかたちをした葉っぱ(花かなあ?)がたくさん伸びている。
本当の葉らしいものは別に付いているから、やっぱり花か…ガクだと思う。


下に札が差してあった。



…アンスリウム?


へぇ。聞いたことない。


───ヨシキほんとにうれしい!きれいなハートがこんなにたくさん!!



俺は階段を駆け上がった。
ヨシキに、早くお礼が言いたかった。


…ヨシキ!


最後の段を上りきって叫んだとき、俺の目に飛び込んできたのは、フロアの隅にうずくまっている彼の姿だった。


…ヨシキ…?


コートを着たきり、彼は放心したような目をしてそこにいた。


…どした、具合悪い?

「…ううん」

…疲れたんだろ。下においでよ、あったかい紅茶入れる。

「…ううん、…いいの…」


…???


訳がわからない。
なんでここまで憔悴してるんだ?
あんなに浮かれて出かけていって。
あんなに素敵な贈り物──…。


…すごいね、ヨシキ今年のプレゼントは。びっくりしたよ!


話しながら、彼の冷たい手を握る。
耳もほっぺも鼻も、ほら、とっても冷たいよ?



…何か…あった?いやな思いでもしたの?

「ん~……いやっていうんなら、…全部…いや…」


ヨシキは床を見つめて言った。


…何言ってるんだよ、わかんないよそれじゃ。

「いい加減…もううんざり…」

…どういうこと?ちゃんと話して。

…うん?ヨシキ?


「あのね」


ためらうようにヨシキが言った。


「あんなの、あげたいんじゃなかった…」


…えっ!?


ヨシキは、自分の耳元に添えられた俺の手に、甘えるようなキスをしてこう続けた。


「あれ…ほんとはね。白じゃなくて、赤なんだよ…」

「赤い…ハート型が、いっぱい…いっぱい……」


いつもだったらとっくに泣いているところだ。
彼の眼差しが揺れて、涙をこらえているのがわかる。


「すごい…いいもの、みっけたと思ったんだ…これバレンタインデーのプレゼントにしよ、って」

…うん。


「けど。なんかやっぱ人気あったみたいで…。今日、、、あっちこっち探したけど、なかったの、白しか」

「吉祥寺まで見にいったんだけど、赤は、全部…なくて……結局…そこの新晴園で…白いの、、買って、きた」

…そ…、か。


「予約とか…しとけばよかったのに…ばかだよね~おれ…」


そこで、ついに一滴の涙がヨシキの目からこぼれて、一直線に頬を伝った。


どうしたらいいのか、わからなかった。
下手に手を出したら、またヨシキを後悔させて泣かせて終わりだ。
頑張ってるのに。


ヨシキは無表情なまま、それでも俺の手に頭を預けている。
涙にはかまわないで、って、彼の顔はそう言っていた。


…うん。話は…わかった。ちゃんと聞いたよ。


ヨシキは黙ってる。


…でも、ね。今日の主役の俺としては。こんな寒いとこにお姫様を放置しておくわけにはいかないんで。


ヨシキがふっと俺を見つめた。
やっと。


…これから強制送還。いい?ヨシキ。


返事を待たずに抱き上げた。
冷えた体が、素直にされるままになってる。

首に絡み付いてくる腕と、肩で鼻をすすり始める、…大好きな、恋人。


───うん。いいんだよ、それで。気持ちは、わかってるよ―…。







ヨシキを抱えて下に降り、コートを脱がせて椅子に座らせた。


…寒い?平気?
「うん…」


台所で、シナモンやクローブ、カルダモン…いろんなスパイスのきいた熱いミルクティーを入れる。
特別な日だから、シナモンはスティックもサービスで。


…はい、熱いけどおいしいよ。

「…ありがと」


ヨシキは、紅茶が冷めるのをしばらく待ち、ごくん、と飲んでは一休み、またごくん、と飲んでは一休み、と、一口ずつ時間をかけてカップ一杯を飲み干した。


それを見届けてから。



俺は、一か八かの勝負に出ることにした。

テーブルの上には、ヨシキが贈ってくれた植木鉢。
真っ白なハートが、ひらひら踊ってる。



…ヨシキ?

「は…い…?」


…思うんだけどね?よく聞いてよ?


ヨシキが体を強張らせたのがわかった。


…俺、白いのしかなかったのは、神様からの贈り物なんじゃないかって思う。

「……。」


…だって…こんな、真っ白なハート…ヨシキみたいでしょ?

「…?…どうゆう、こと?わかんない…」

…わかんないの?

「ぜんぜん…」


…知りたい…?

「……うん。。。」



ヨシキは自信なげに頷く。


俺は腰を屈めて、ヨシキの頬を包み込んだ。
彼はひどく驚いた様子だったけれど。



…ヨシキ。


俺は、彼の瞳をのぞき込んでから、とても深く、…キスをした。



「…っ!?」


失敗は、できなかった。


…ヨシキ、聞いて?

「……」


…このハートが白いわけはね。ヨシキの心みたいに…純粋無垢でさ、だから真っ白なんだよ。


「え…」


ヨシキが顎をひいて俺の目を見た。

俺は彼の戸惑いを敢えて受け流して、そのままキスを重ねていく。
彼に強く、言い含めるように。



…ヨシキはさ、…すんごくピュアで、


「トシ?」



…いつだって、とってもとっても眩しくて、


「…ちが…う」

…違わないよ。…いつでも、どこまでも…キラキラ輝いてて。

「と、し…っ」



彼が、むせるように泣き始めた。
その熱い唇で、俺の言葉に必死で応えようとして、泣いてる。

なんだか、まるで責められて困ってるみたい。


…そうやってね、ヨシキは…ずっと、ずーっと俺のことだけ考えて。

「とし…そん、な…」

…一生俺といっしょに、ふたりで生きてくんだから。

「トシ待ってよ…」

…やだ、待てない、大切なことなんだ。

「トシ…っ、待って、ねえおねがい…」


ヨシキの顔はいつのまにか涙でびしょぬれだった。
俺は少しだけ、ヨシキをキスの洪水から解放した。


…うん?キスいや?

「ううん!いや、じゃない!いやじゃないよ」


彼は首を横に振った。


…そう?じゃあ、俺の気持ち、わかった?


するとヨシキはまた目を伏せ、むせび泣いて言った。


「うん…もしほんとに…ほんとにね、トシがそう思ってくれてるならだけど…」


俺は微笑って返す。


…もちろん本当だよ。嘘なんか…つかない、こんなときに。

「なら……うれしい…白いハート、おれ?…うれしい」


ヨシキが袖で顔をゴシゴシこすった。
髪が乱れて頬に張り付いてる。


…そっか、うれしい?…よかった。


ヨシキの涙はもう、悲しみのそれじゃない。

ほっとしてヨシキの髪を撫でていたら、ヨシキが言った。


「…でもね、ちがうの。ちがうんだよ、言いたいこと。トシだよ…トシが…、、、」

…俺?俺が何?

「あの、…傷ついたらごめんね。でも…トシが、変」

…変?俺のどこが変?

「だって。トシ、泣いてる…よ?なんで…?どうしたの?トシ…?」



俺は、思わぬ自分の失態ぶりに苦笑した。
キミになんか言われなくてもわかってた。
さっきから手が震えてるし声もかすれてる。



…知らない、そんなの。すっごく、緊張してるからじゃん?


涙でぐしょぐしょのヨシキの頭を抱き寄せるしかなかった。


「緊…張、、、……?」


俺の腰の骨辺りに顔をくっつけたヨシキが、びっくりしたように声を上げる。


───仕方ないだろ?目の前の相手を落とせるか落とせないかの瀬戸際だったんだから……。


…うん。すっごく、緊張してるんだ…おかしい?

「うん…おかしいよ…おれのこと慰めてくれたんでしょ?なんでキンチョーするの?」


…(笑)、そのうち、わかるようになるよ、きっと。

「うん──…そう、かなぁ」




それから俺は、もう一度屈んで、愛しい恋人に新しいキスを贈った。
慰めるためのキスじゃなくって、祝福のキス。

ヨシキの手が、俺の肩をしっかりと抱きしめているのを感じながら、俺は「愛してるよ」ってささやいた。

ヨシキがくり返す、「おれも…あいしてる…よ?」って。



ふたりの涙が混じり合って、いっしょになってこぼれていく。

お互いの──…
それぞれの──…


切ない想いの…カケラたち。



───そんな今年の、WHITE×WHITE St. Valentine's Day............



86238751.jpgWHITE×WHITE St.Valentine's Day



《END》


懐かしすぎました、季節外れでごめんね!
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夢想と薔薇の日々<ミス・ユー ~あなたが恋しくて~>ステップ2

『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。

冬の夕暮れ。
すでにほとんど東京の空に色はなくて。
街灯の光だけが、明るく町並みを照らしてた。
向かいの家でも、キッチンに明かりがついてる。

手の中の、ミス・ディオール。

こんなの、、、受け取っちゃっていいのかな。 

おれはまだ夢うつつでいた。
なんでトシはこれ、買ってきてくれたんだろ?
しつこいようだけど、寝言かなんかで言ったとしか思えなかった。
だって!
他にある・・・?
薔薇のクリームなんてそこらじゅうにあるんだよ?
なんでよりによって、これ・・・?
もう脳みそがクエスチョン・マークだらけ。

───もしかして……、もしかして、ほんとに愛のチカラとか言う?? ほんとにホントに本当!?

確かめる方法なんてない。
100歩譲って、どっかでおれが口を滑らせてたとするよ。
けど、もしそうだったとしても、トシは事実は言わないよね。


「さむ。。」



我に返ったら、エアコンもカーペットもついてるのに寒気がした。
陽が沈んで気温が下がったんだと思う。
時計を見たら、さっきからもうずいぶん時間が経ってた。
───あ。


「お礼!言わなくちゃ!」


今までボケッと座り込んでたおれは、いきなりスイッチが入ったみたいに立ち上がった。
フロアを突っ切って、トシのいる下のキッチンめがけて階段を駆け降りた。
エアコンとカーペットの電源切るのも忘れて。

胸が死にそうにドクドク言ってた。
なんてお礼言ったらいいか、そんなの考えてる暇なかった。とにかくトシに逢わなきゃ。

おれがひどい音立てて階段を降りてったもんだから、今度はトシが驚いて、キッチンからダイニングを抜けて廊下に飛び出してきた。


…なに?ヨシキ?何やってんの!?

「トシ!」

…どした。大丈夫?


いつもの。
お約束のパターン。
心配そうな表情で、おれを抱き止めようとする。
ほんとに、いつもの、トシ。

トシの顔を見たら、なんか知らないけどメチャクチャ安心したっていうか、緊張が吹き飛んじゃって。
気付かないうちに涙がどば~っとあふれてきて、あっという間に泣きじゃくり始めちゃった。


「トシ!トシ!これ。。。これ。。。」


緊張の糸が切れるとさ、おれ泣いちゃうんだよね。
気付いたら、もう、トシに飛び付いてた。
あ~みっともない、必殺ゴールデンパターン。

トシはクスクス笑って抱きしめてくれた。


…何をそんなにあわててんの。

「だっ、だってね、、、ミス・ディオール!」

…うん。

「お礼言ってなかったから!」

…泣くことないでしょ。

「知らないよ~う、、勝手に泣いちゃうんだもん。。」

…はいはい。


トシの肩で泣いてるおれ。
おれを抱いたまま、おれの背中とんとんってしてるトシ。


「これ、、ミス、、、ディオール。ありがと、、、ありがと、、ありが、、、と、トシ~。。


泣いてるからうまく言えない。


…どういたしまして。

「ごっ、ごめんね・・・」

…ん?なんで?

「プレゼント、、、」

…え?、、、うん、……いいよ。


何が何だかわかんなくなっちゃった。
トシはずっと、ヨシキだいじょうぶだよ、って言って笑いながら、背中とんとんしててくれた。
いつもの必殺パターンなのに、こうやってトシにしがみついて泣くのは、すごい久しぶりな気がした───。


ひとしきりわぁわぁ泣いたら落ち着いたみたいで、すっきりした。


…またいっぱい泣いたね。

「うん。。」


恥ずかしくて下向いてたら、トシがね、両手でおれの顔挟んで上向かせようとするの。
チュ~したいんだって、わかったけど。
おれ泣いたあとだったもん、イヤで、下向いたままでいた。


…やなの?

「うん。。。」

…どうして?

「変な顔してるもん、泣いて」

…ダイジョブだよー今更、慣れてるでしょそんなの。


トシが笑う。
おれは抵抗する。


「やだよぉ~」


本気で恥ずかしいのに、トシってば許してくれないんだよね。
サディストです。
ご存知の通り、ときどきおれは犠牲になります。
今も。


…だめ、言うこと聞いて?

「だって、なんで今なの、、、」

…かわいいから。

「もっとかわいいときあるじゃん、、、」

…今がかわいいんだよ。


トシの顔が覗き込むみたく下りてきて、ぎゅって頭を抱えられちゃって。
おれはまた、涙ぐんだ。
トシは強引だった。
声はやさしく囁いてるんだけど、やだって言えない。
もう、抗えなかった。


…いいよね。。。


うん、って言う間もなくトシの唇の熱が伝わってきた。
やわらかくて、気持ちよく乾いてて。
それからすぐに舌が奥まで入ってきて、あったかいトシの味がしたよ。
あんまりうまく説明できないんだけど、、、トシが怖いときに無理やりするチュ~みたいに熱っぽかった。
トシ、興奮してるのかな?


「ト…シ、、、?」


必死に、どうしたの、って訊こうとしたけど、なんか訊けない雰囲気。

おれだって、もともとトシのこともチュ~も嫌いなわけじゃないから、結局押し切られてお互い抱き合っちゃいました♪
ヘンなシチュエーションだよね。
薄暗い廊下で、男同士が熱い抱擁と接吻です。。。
あ~、意識が遠退きそうなくらいキモチいい~~……。



.。o○.。o○.。o○.。o○





その夜は。

なんでだか、トシは無口で。
ふたりでほとんど黙って、ごはん食べた。
喋らないこともないけど、おいしいね、とか、これもっと食べな、とか、なんかぎこちない言葉のやり取りだったな。

んで。

え~と~。
結果のみ言うとね。
なんとクリーム、塗らなかったの。

お風呂から出てベッドでゴロゴロ待ってたら、あとからお風呂入って出てきたトシに押し倒されました。
まあ、、、なんとなく予感はあったんだけど。
正直に言ったら、予感ってゆうより期待かな。
もう泣いたあとでもないし、うれしい夜だったから、エッチしてもいいな~って。





《ステップ2 END》
さてさてどうなる!?
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夢想と薔薇の日々<ミス・ユー ~あなたが恋しくて~>ステップ1

『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。

1週間以上前のことだったと思う、薔薇のハンドクリームの残りが少なくなってるのに気付いたの。

でもなんかぼけ~っと過ごしちゃって。
トシに毎日、買いに行きなよ…って言われてたのにそれもしなくて。。

ん~~、そしてとうとう、なくなった。

前の晩ね、トシにいつもみたくクリーム塗ってもらってて、トシが、もうないじゃん…って。


…これ どこのだっけ。

「ハウスオブローゼ」

…この香り好きなの?

「大好きってゆうわけでもないけど、、、」

…早く次買ってこないと。ないんでしょ?

「うん。。」


塗り終わるのと同時に、トシがおれの手をぎゅってして言った。


…明日買いに行ってきなー。じゃないと!ローズのクリームなしになっちゃうよ。

「うん。。そうだね、、、」









トシのお決まりの「無香料・薬用」っていうクリーム。

その上から、おれの好きな薔薇のクリーム。

けど、おれの好きな、って言っても。

なんか最近、惰性で「ローズ」って名前がつくクリーム端から買ってる気がする。

少しは、ほんとに欲しいのも、あるんだけどね。
クロエとか、あとディオールとか。
クロエの方は名前忘れた。
ローズといろんな匂いのミックスじゃなかったかな?
ディオールは、ミス・ディオール!
ローズウォーターふんだんに使ってるって書いてあった。
名前からして惹かれるんだよな~……。

でもね。
クロエのナントカにしても、ミス・ディオールにしても。
高すぎるんだよ。
値段がね。

5,000円とかするの。

って言っても、たかだか正価で1本4、5千円じゃん。
そんなのが高すぎて買えないってゆう話じゃないの。

この頃おれ わかったんだけどね~え。
おれがハンドクリームの「儀式」に求めてるのって。
ローズの香りがどうのこうのじゃないんだよ。
そうじゃなくて、トシがクリーム塗ってくれること自体なんだな、って。

おれの手をやさしく包んでくれるトシ。
丁寧に丁寧に塗ってくれるのね、いつも。

でもトシがおれにそうしてくれるのはさ、だって、“愛”なんだもん。


だからおれは、昔みたくローズにこだわってるんじゃない。
トシに、こだわるようになったの。


わかった?

っていう理由で、何もわざわざブランド品のクリーム使うこともないかな~って話。
たぶんトシってば自分で代金払う気だからね。

最初の頃におれがふざけて、ねだって買ってもらってたらそれがお約束になっちゃってさ。
クロエだろうがディオールだろうが、もしおれが欲しいって言っちゃったら、平気でお金出すよ、あのひと。
それじゃ、おれが困るでしょ。

おれっていう立場的に。
・・・おれにだって、なけなしのプライドがあんの!!!

さよなら、ミス・ディオール!









…ヨシキ、ヨシキ!!

「ん・・・」

…まーたこんなところで寝ちゃってるんだから、もう!


トシに起こされて、飛び起きた。


おれ眠っちゃったんだ、驚いた。
冬って、2階のフロア部分で電気カーペットの上にいると、ついついやっちゃうんだよね~。
お風呂場と寝室をつないでる、広いフローリングで、デュークも、いるし。

あ~トシ、いい声♥️
この声で怒られるんならキモチよくて何だってしちゃう。


…寝るなら寝るで部屋にベッドがあるでしょう。何度も言わせないでよ。

「うん。。。ごめんね」


素直に謝る。
マゾヒストとか言われたって平気です。


…風邪引かれたらこっちが困るんだよ。

「は~い・・・」


厳しいときの彼、好き。
大好き。
言わないけど♥️


…すぐに夕食つくるけど。あ!

「?」

…買ってきた?ハンドクリーム。

「あ~ううん。すっかり忘れてた」


嘘ばっかり。


「いいよ、今日は。無香料のやつだけで、、」


おれは、ふああ~って出そうになるあくびを噛み殺した。


…ヨシキー。

「はい?」


まだ何か叱りたいのかな。
無意味に、ちょっとわくわく。


…あのね。いやなら…いいんだけど。

「ん?」


トシが、後ろのバッグからがさがさ何かを取り出してるのがわかった。
なんだ?って思ってたら、次の瞬間、おれに1個の紙袋を バンって。

つき出された紙袋見たら、ディオールのショッパーなのね。


…おみやげ。というか、プレゼント。気に入るかな。

「え?何?香水…?」


口紅とかなわけはないから、当てずっぽうでとりあえず香水って。


…ううん、クリームだよ。

「ええ?」


まさかまさかまさか。
おれは、めちゃくちゃドキドキしながらショッパーの中を覗き込んだ。

まさかのまさかのまさか、だった。


「ミス・ディオール~!!!」


さっき、さよなら~ってどっか行っちゃった、ミス・ディオール!


「すご~~~い♥️」

…よかったー、うれしそうな顔してる♪


トシの顔を見上げたら、トシこそうれしそうじゃん。


…あー、よかった。間違いなかった!

「・・・・・」


なんか、感動して、っていうよりあっけに取られて、言葉が出てこない。


…びっくりした?

「びっくり、、、した。。!!」

…あはは。

「なんで~?なんでトシ、おれが欲しいのわかったの!?」


もうホントにビックリだった。
まさかのまさかのまさか、寝言で言ったとかじゃないよね?


…わーかります!

「だからなんでよ?」

…え?んー、愛のチカラってもんですよ。


誇らしげに言われて、おれは一気に照れた。


「やぁだ そんなの/////   …ちょっとほんとに!真面目に答えてよ、どうして??」

…えー、、、。


トシは、今度は俯き加減で微笑いながら言いました。


…愛のチカラってことにしといてくんないかなー。

「寝言で言ってたの…?」

…違うって!俺は真面目に言ってるの、キミは信じればいいの!

「愛のチカラを?

…そ。

「ん、ん〰️〰️💦」


どう考えてもわかんなかった。


…ヨシキの好きそうなものくらい、わかるよ。何年一緒にいるの、俺ら?


トシがおれの顔見てる。
おれは恥ずかしくなっちゃって、トシの胸とか腕をバンバン叩いた。


「も、やぁだぁ~~/////」

…いたたた、痛い!痛いって!…ね、ね、生まれる前から一緒なんだよね?

「違うもん 違うも~ん!トシのバカ~/////」


おれ、自分の顔が真っ赤になってるのわかったよ。
そんでもって、それがトシの思うツボだってこともわかってた。
けど、どうすることもできないじゃん!

好きなひとからね~、『愛のチカラ』だの『生まれる前から一緒』だのって口説かれてみなよ、冷静でいられる方がおかしいでしょ~!!!


…ヨシキかわいいね♥️


からかわれてるのかな、おれ?


「かわいくないもん!」

…かわいいよ?

「・・・💦」


黙って下向いてたら、トシが立ち上がって言った。


…夕飯つくってくるよ。

「、、、ん。」


行きがけに髪の毛クシャクシャって、された。
また、顔がカーーーッてなる。

ミス・ディオール持ったまんま、そのとき、おれは情けないくらい、トシが好きだった。

だけど『愛してるよ』なんて、どうしたら想ってる心の通りに言えるのか、わかんないよ。

絶対、言葉にしたとたん安っぽくなっちゃうに決まってるじゃん……。

急いでトシが階段降りてったあとに、クリームのお礼も言ってなかったことに気付いた。
バッカだなぁ~おれ。

落ち込むよな~、もう。
ほんとに、やだ。







《ステップ1 END》

🔗リンク<秋から我が家で見かける風景> 👈
✳️「デューク」の記事はたくさんあるので、記事検索から「デューク」で検索をお願いします

まだまだ続くから待っててね💕💕
バナートシ3



長い冬眠からの目覚め!(○´艸`)❤

今日は、本当に暖かくて、春!という感じでしたね。
わたしは、冬の間は精神的にほとんど外出できなくて、2月に入ってからは、抑鬱状態も多かったのですが、今日は久しぶりに気分が晴れて、やっとこさまともに外に出ました。
いろいろひとりで用足しに行ってきたんだけど、紅白の梅、しだれ梅なんかがとってもきれいだったり、あちこちで植物が春を迎えている中を、とことこずーっと歩いてきました。 
『夢想と薔薇の日々』とは全く関係ないのですが(ごめんなさい!)、うれしいことがあったのでアップします。

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【突発】夢想と薔薇の日々<もうひとつのラ・ヴィ・アン・ローズください>その後sideヨシキ(ⅲ)

゚+.ヾ(●´I`)ノ.+゚.。オハヨ~✽
こんな時間に何ですか!?という感じですが。
コソコソするのは、何かしら魂胆があるからで。
もし、戯言にお付き合いいただけたら、幸いです。

そう、今ね、何をしてたかっていうと、『夢想と薔薇の日々』第二章を始めるにあたって何か足がかりがないかなぁと思って、過去の原稿を整理してました。
そうしたら、<ラ・ヴィ・アン・ローズください>その後sideヨシキ(ⅲ)の別バージョンが出てきたんですよ。
すっかり忘れてたのが。
結局ボツにしたんだから、そのまま葬り去られても当然な部分で、本来は、お見せするべきじゃないと思う。

し・か・し!

これが、邪道だけど、なかなか捨てたもんじゃない。
当時はあれだけ「描けてない描けてない!」って苦悩してたパートを、今になって読み返すと、けっこうおもしろいなって。
もちろん、本当はいけないコトですよ、こういうやり方はね。
百も承知なんだけど…(笑)。

だから、興味がある方のみ読んでくださったら、それでいいと思います。
ごめんね、いろいろあるんだってばよ!

では、参ります。

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『夢想と薔薇の日々』リバイバル<我が家で秋から見かける光景>

『夢想と薔薇の日々 (Days of Réverie and Roses)』はあくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」(夢見る、想う)は個人が有する当然の権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、どうぞよろしくお願いいたします。

そんなのはしょっちゅう触っているからすぐにわかるのだけど、この時期、にわかにヨシキの手が荒れ出す。


…ヨシキ、そろそろハンドクリームつけないとだめだね。明日の朝ね。

「…う…ん…」


昨晩ベッドの中で彼の手を握ったとき、眠そうな彼と約束した。


―――で。

今、ヨシキは正座して、オレの前にかしこまっている。
なんで正座なのかよくわからないけど、別に訊ねるほどのことでもないし…。


…はい、右手出して。

「はいっ」


オレがヨシキの手にクリームを塗るときには、ふたりのあいだにひとつだけ決まりがある。
それはどういうことかと言うと。

ヨシキはとにかくバラの香りのクリームを使いたがるのだ。
だけどオレに言わせれば、そのクリームには一応保湿成分が含まれてはいるけど、ちっとも肌荒れには効かないのだった。
だからオレは愛用の、無香料で薬用のハンドクリームを使ってやりたいのに、ヨシキは頑なに「ローズのがいい!」とごねる。


…だっていくら匂いなんかしたって効かなきゃ意味ないじゃん!

「塗ってるときは効いてるんだもん!」


押し問答の末にオレが考えたのがこれ。


…まずこっちね。

「うん」


オレは無香料の方をヨシキの手につけて、よーくマッサージするようにすり込む。
ヨシキは神妙な顔つきで自分の手を見ている。

それから、


…はい次これだからね。

「うんっ!」


と、バラの香りのクリームを見せて確認する。

ヨシキが満足するよう、ほんのり乗せるように塗ってやる。

右手が終わったら左手。
やっぱりいつも、左の方が微かに冷たくて。

同んなじようにクリームを重ねて塗る。
無香料の上に、薔薇、薔薇、薔薇。

あーもうヨシキってほんっとバラが好きだよなぁ…別にかまわないけどさぁー…。
と、心の中の独り言。


…よし、できた!いいよ!

「わーい!ありがとう、いい匂い~♪」


こうして一件落着―…。

我ながら、というか、我々ながら、よくできた習慣だと…思うのだけれど。


この光景は、日に数回、春先まで続く。



《おわり》
(Nov. 07.2012掲載)



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夢想と薔薇の日々<百万本のバラ>

『夢想と薔薇の日々 (Days of Reverie and Roses)』はあくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」(夢見る、想う)は個人が有する当然の権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、どうぞよろしくお願いいたします。


百万本のバラ


明け方帰宅した俺は、寝室に入るなり驚いた、というより、完全にビビッた。
ベッドの上にヨシキがひざを抱えて座っている。

いかにも、眠そう。 


「トシ、…待ってたよ~?」
…なんだよこんな時間に?

「んん~~…だってさぁ、今日お誕生日でしょ?トシ」

…え。

…あ、そうだ。忘れてた。 


 「えっ?!てことはぁ!まだ誰にも『おめでとう』言われてない?!」
…うん、言われてないよ、今気付いたもん。


 「やったぁ~~!」と駆け寄ってくると、ヨシキは俺の首にぎゅ~っと抱きついて言った。

「おれがいっちば~ん!♪♫トシお誕生日おめでとぉ~~~


毎回毎回、唐突なんだよな、この強烈なハグが。


…ありがと。ヨシキがいちばんでうれしいよ。…で、眠くないの?
「眠たいよぉ、だからトシが帰ってきたら一緒に眠ろうと思ってたんじゃん?」

…シャワー浴びて着替えないと。
「もういいよそのまんまでぇ」

…よくなーい。ちょっと行ってくるから。
「……え~~…はぁい」




風呂場から戻ると、ヨシキは完全にぐ~ぐ~眠っていた。





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夢想と薔薇の日々<ビタミンカラーとグランドピアノ ~母の日SP~>

『夢想と薔薇の日々(Days of Reverie and Roses)』はあくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」(夢見る、想う)は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、どうぞよろしくお願いいたします。

無理を通してGW前から長いこと仕事を入れていなかった俺は、連休が終わるとスケジュールがびっしりで、毎日のように家を空けている。
それなのに!
こんなときに限ってヨシキの具合が悪い。
単なる風邪だとは思うのだけど、頭痛と腹痛、吐き気がひどくて、俺は仕事と言っても心ここに在らずでひたすら家に帰れる時刻ばかりを気にしていた。
俺がピリピリしてるから、マネージャーやスタッフたち回りも過敏になっていて、それがまた俺を苛立たせる。

GWはヨシキと“甘い生活”をエンジョイしてしまった身だ、自業自得ではあると思う。
だけどそれにしたって、これじゃあヨシキがかわいそうってもんだろう。
腹痛と吐き気があるから、食べなきゃいけないものも食べられない。
もっと悪いことに、ヨシキは歯医者の鎮痛剤でアレルギーを起こしてから、頭痛薬はまるっきり飲まなくなってしまった。

へとへとになって家に帰り着くと、俺は真っ先に寝室へ向かう。ドアの前でなるだけ呼吸を整えて、自分で自分を落ち着かせるんだ。
それからだ、そっと部屋に入るのは。

…ヨシキ?ただいまー…起きてる?
「…んん…おかえんなさい…」

頼りない声でヨシキが 布団の下から言う。

…今日はどうだった?頭、痛い?
「…ううん…今はへいき」

…お腹は?
「…それも…だいじょぶ…」
…吐き気止めは飲んだの?
「うん…だから…吐いてないよ…」
…そう。
 
そんなやり取りをして、俺はようやくホッとできる。
毎日これのくり返し。
家事だとか自分の生活だとか何だとか…一切合財が二の次だった。
何でもいいから仕事をやっつけて、とにかくヨシキに逢いに帰ってくる―…そのことだけが俺を支えてた。
ヨシキが実際に吐いたりしなかったのが唯一の救いだったけど、…わからない、本当は吐いたのかもしれない。
頭痛だって、出れば彼の場合泣かずにいられないほどの激しい痛みなんだ。
頭が痛み出したら、いつもは付きっきりで看ていてやらないといけない。
たぶん彼はここ数日、ひとりでその激痛に耐えてきたんだろう。





.。o○o。.★.。o○o。.☆.。o○o。.★.。o○o。.☆





乱雑な気持ちで仕事をこなして、ただまっしぐらに恋人の枕元に帰る、そんな生活が3~4日続いたろうか。
少しヨシキの体調が落ち着いたので、俺の焦りのような切羽詰った気持ちも消えて、帰りの車でふと思った。

―――そうだ。ヨシキにおみやげ買っていこう!

なんだか久々にワクワクして、あれやこれやと考えた。
が。
まだ食べ物はよくないし、音楽関係も彼は自分で選ぶひとだ。
欲しがるのはいつも俺のオフィシャルグッズだったけど、今から事務所に戻るのもバカバカしい。―…第一俺のポリシーに反してる。それは絶対にNG。

―――なんだろう?香水?ジュエリー?バスグッズ?それともくまさんかパンダちゃんのぬいぐるみでも買ってくか? 

自分でブフッと吹き出して、ぬいぐるみはないよな、と思った。だって彼もうおきにいりの小さなくまさんを持ってるもの。
結局、共通するテーマを考えてたら『薔薇』に辿り着いた。
薔薇関係でなんかいいものないかなぁ…とまた考え出して、車を走らせていたら、ふと花屋の前を通り過ぎた。

―――あ!薔薇って…。そのものでいいんじゃん!

決めた!薔薇の花束だ。
今まで気づかなかった自分の愚かさを嗤ってやりたい。

白山通り方面を回れば、鉢植えもプリザーブドフラワーも全部置いている行きつけの店がある。
俺は本当に浮かれていた。


 
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