『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。冬の夕暮れ。
すでにほとんど東京の空に色はなくて。
街灯の光だけが、明るく町並みを照らしてた。
向かいの家でも、キッチンに明かりがついてる。
手の中の、ミス・ディオール。こんなの、、、受け取っちゃっていいのかな。
おれはまだ夢うつつでいた。
なんでトシはこれ、買ってきてくれたんだろ?
しつこいようだけど、寝言かなんかで言ったとしか思えなかった。
だって!
他にある・・・?
薔薇のクリームなんてそこらじゅうにあるんだよ?
なんでよりによって、これ・・・?
もう脳みそがクエスチョン・マークだらけ。
───もしかして……、もしかして、ほんとに愛のチカラとか言う?? ほんとにホントに本当!?
確かめる方法なんてない。
100歩譲って、どっかでおれが口を滑らせてたとするよ。
けど、もしそうだったとしても、トシは事実は言わないよね。
「さむ。。」我に返ったら、
エアコンもカーペットもついてるのに寒気がした。陽が沈んで気温が下がったんだと思う。
時計を見たら、さっきからもうずいぶん時間が経ってた。
───あ。
「お礼!言わなくちゃ!」
今までボケッと座り込んでたおれは、いきなりスイッチが入ったみたいに立ち上がった。
フロアを突っ切って、トシのいる下のキッチンめがけて階段を駆け降りた。
エアコンとカーペットの電源切るのも忘れて。
胸が死にそうにドクドク言ってた。
なんてお礼言ったらいいか、そんなの考えてる暇なかった。とにかくトシに逢わなきゃ。
おれがひどい音立てて階段を降りてったもんだから、今度はトシが驚いて、キッチンからダイニングを抜けて廊下に飛び出してきた。
…なに?ヨシキ?何やってんの!?
「トシ!」
…どした。大丈夫?
いつもの。
お約束のパターン。
心配そうな表情で、おれを抱き止めようとする。
ほんとに、いつもの、トシ。
トシの顔を見たら、なんか知らないけどメチャクチャ安心したっていうか、緊張が吹き飛んじゃって。
気付かないうちに涙がどば~っとあふれてきて、あっという間に泣きじゃくり始めちゃった。
「トシ!トシ!これ。。。これ。。。」
緊張の糸が切れるとさ、おれ泣いちゃうんだよね。
気付いたら、もう、トシに飛び付いてた。
あ~みっともない、必殺ゴールデンパターン。
トシはクスクス笑って抱きしめてくれた。
…何をそんなにあわててんの。
「だっ、だってね、、、ミス・ディオール!」
…うん。
「お礼言ってなかったから!」
…泣くことないでしょ。
「知らないよ~う、、勝手に泣いちゃうんだもん。。」
…はいはい。
トシの肩で泣いてるおれ。
おれを抱いたまま、おれの背中とんとんってしてるトシ。
「これ、、ミス、、、ディオール。ありがと、、、ありがと、、ありが、、、と、トシ~。。
」泣いてるからうまく言えない。…どういたしまして。「ごっ、ごめんね・・・」…ん?なんで?「プレゼント、、、」…え?、、、うん、……いいよ。
何が何だかわかんなくなっちゃった。トシはずっと、ヨシキだいじょうぶだよ、って言って笑いながら、背中とんとんしててくれた。いつもの必殺パターンなのに、こうやってトシにしがみついて泣くのは、すごい久しぶりな気がした───。
ひとしきりわぁわぁ泣いたら落ち着いたみたいで、すっきりした。
…またいっぱい泣いたね。
「うん。。」
恥ずかしくて下向いてたら、トシがね、両手でおれの顔挟んで上向かせようとするの。
チュ~したいんだって、わかったけど。
おれ泣いたあとだったもん、イヤで、下向いたままでいた。
…やなの?
「うん。。。」
…どうして?
「変な顔してるもん、泣いて」
…ダイジョブだよー今更、慣れてるでしょそんなの。
トシが笑う。
おれは抵抗する。
「やだよぉ~」
本気で恥ずかしいのに、トシってば許してくれないんだよね。
サディストです。
ご存知の通り、ときどきおれは犠牲になります。
今も。
…だめ、言うこと聞いて?
「だって、なんで今なの、、、」
…かわいいから。
「もっとかわいいときあるじゃん、、、」
…今がかわいいんだよ。
トシの顔が覗き込むみたく下りてきて、ぎゅって頭を抱えられちゃって。
おれはまた、涙ぐんだ。
トシは強引だった。
声はやさしく囁いてるんだけど、やだって言えない。
もう、抗えなかった。
…いいよね。。。
うん、って言う間もなくトシの唇の熱が伝わってきた。
やわらかくて、気持ちよく乾いてて。
それからすぐに舌が奥まで入ってきて、あったかいトシの味がしたよ。
あんまりうまく説明できないんだけど、、、トシが怖いときに無理やりするチュ~みたいに熱っぽかった。
トシ、興奮してるのかな?
「ト…シ、、、?」
必死に、どうしたの、って訊こうとしたけど、なんか訊けない雰囲気。
おれだって、もともとトシのこともチュ~も嫌いなわけじゃないから、結局押し切られてお互い抱き合っちゃいました♪
ヘンなシチュエーションだよね。
薄暗い廊下で、男同士が熱い抱擁と接吻です。。。あ~、意識が遠退きそうなくらいキモチいい~~……。.。o○.。o○.。o○.。o○
その夜は。
なんでだか、トシは無口で。
ふたりでほとんど黙って、ごはん食べた。
喋らないこともないけど、おいしいね、とか、これもっと食べな、とか、なんかぎこちない言葉のやり取りだったな。
んで。
え~と~。
結果のみ言うとね。
なんとクリーム、塗らなかったの。
お風呂から出てベッドでゴロゴロ待ってたら、あとからお風呂入って出てきたトシに押し倒されました。
まあ、、、なんとなく予感はあったんだけど。
正直に言ったら、予感ってゆうより期待かな。
もう泣いたあとでもないし、うれしい夜だったから、エッチしてもいいな~って。
《ステップ2 END》
さてさてどうなる!?