『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。
ときどきね、ふっと。
トシの後ろ姿が、さみしげに見えることがある。
誰も、寄せ付けない背中。
おれのことさえ忘れてしまって、たった独りっきりの背中。
おれは思わず駆けていって、「トシ!」って、その後ろから抱きつくけど。
だって、怖いから。
トシ、どこかへ行っちゃいそうで。
決まってトシは、不意をつかれたように振り返って、そして、おれの名前を呼ぶんだ。
ヨシキ、って。
どうしたの、って。
その声がとてもやさしくて。
おれはほっとして、いつも自分がバカみたいって思うんだけど…それでもトシに言ってしまう。
「トシ、すごくさみしそうに見えたから。ひとりで……」
するとトシはね、こう返すんだよ。
…それ。ヨシキじゃん。
…キミの方が、触れられなくて、けどさみしそうで、俺、どうしていいかわからなくなるよ。
そんな…、って、おれは困惑する。
おれはいつだってそんな、さみしくなんかないよ。
トシがね。
トシが、いてくれれば。
─────いてくれるよね…ずっと……?
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人って。誰でもみんな、“孤独な背中”を持ってるのかもしれない。
一緒に暮らしてても、どんなに手を握ったり、抱き合ったりしてても。
おれがトシの後ろ姿に感じるような、独りっきりの世界を、おれもトシに見せてるのかもしれない。
ごめんね、とか。
ひとりじゃないよ、とか。
そんなこと言っても、きっと、ダメなんだよね。
けど。
おれ絶対、トシのこと忘れてる時間なんて、これっぽっちもないんだよ。
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