『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。
後ろからいきなり頬を撫でられて、飛び上がるくらい驚いた。
…Σ ヨシキ!?
「あんまりボーッとしてるからさ~☆」
きゃっきゃっとヨシキは笑った。
ダイニングのテーブルに肘をついたまま、俺はどうやら物思いに耽っていたみたいだ。
「ね~ね~、終わっちゃったね、夏」
…まだたまに、蝉が鳴くぞ。
「うん……、けど。逝ったんだよ」
…ん?行った?誰が?どこへ?
意味がわからず軽い気持ちで訊いたのに、ヨシキは次の3つの言葉をひとつずつ区切って、ゆっくりと発した。
俺に言い聞かせるように。
「トシ。夏が、逝ったんだよ。」
どきっとした。
胸に、一気にもやもやしたものが満ちた。
「トシがいつも言うじゃない。8月の終わりに夏が逝くんだって」
ついさっきまでと一転して、彼の顔は暗かった。
「なんかおれ、つまんない。トシもここんところ、いっつもそんなだし」
…いっつも、じゃないでしょー!
それには直接答えずに、ヨシキは言った。
「8月が終わらなければ、よかったのにね…」
俺の横に立っていたヨシキは、俺の髪にすーっと指を通すと、背中で頼りなげにそれを引っ張った。
どうしよう。
ヨシキの元気がない。
…大丈夫だよ、ヨシキ。だいじょうぶ。
とっさに、俺はヨシキの手を取って、彼を抱き寄せていた。
そして、下から彼の顔を見上げて、くり返した。
…大丈夫だよ。
「けどトシ、この時期毎年そうなるもん。。。」
…ごめん、ヨシキの当たり。確かに最近ふらふらしてたかも。夏の終わり、弱いんだ。
ヨシキの細い、骨の出た腰を、ぎゅっと抱く。
ヨシキは悲しそうに俺の顔を覗き込んだ。
…泣かないの。
「だって。トシが」
…大丈夫。平気だよ。秋には秋の、楽しいことがいっぱいある。楽しみにしててごらん。
「そんなこと、真面目に思ってる…?」
…真面目に?思ってるよ。楽しい秋が来る。だから、お願い、笑って。
彼のお尻を軽く、ポンポンと叩く。
…ヨシキ。楽しい秋を保証する!
俺がそう言って微笑んだからか、彼の表情もやっとほころんだ。
「よかった、信じる♪」
ヨシキの顔に穏やかな笑みが戻って、実際に安心したのは俺の方だった。
「ねぇ」
…うん?
「なんかさ~あ、ふたりでいつもと言うことが逆じゃな~い?」
ヨシキはおかしそうに笑った。
ちゃんと、ヨシキらしいヨシキだ。
もう心配もいらないだろう。
…ふふ、そうだね。
「トシがいけないんだ~」
…なんで?ヨシキのことかまわないから?
「自覚あるんじゃん。ひどぉ~い/////」
…ひどいって💦じゃあ真っ昼間からヤる?
「そんな気ないくせに…」
…え、あるよ、大ありですよ?♡
「まじ?んじゃ、本気見せてよ」
…いいの?☆
すでに、冗談とも真剣な話ともつかない展開になっていた。
俺は立ち上がって、唇でヨシキの口を塞いだ。
「んん、、っ」
…本気、見せるよ。
「う…そ……」
足元をすくって、一息にその場でヨシキを押し倒した。
「あ…っ」
…ちょっと床、痛いかもだけど、我慢してね。
「トシ!」
…何?やめるなら今のうちだよ?
ヨシキがごくんと唾を飲む。
「トシ……あの。」
…ほんとに。今ならやめれるから。
「や…めない……」
呼吸が昂って、肩が上下している。
怖いのかも、しれない。
…ここで、ヤるんだよ?後悔しないね?
「しないよ!ねぇ、楽しい秋になるんでしょう…」
…そうだよ。
「だったら今やめたりして、おれのこと、不幸にしないで…/////」
彼は、また泣き出しそうな顔をした。
…不幸になんて、しない。
深く、丁寧に、キスをする。
…ヨシキ。
「ん…」
…好きだよ。
「うん」
…大好きだよ。
「うん」
…ずっと、ずっと、好きだ、、、
彼のジーンズのボタンに手をかけ、Tシャツも乱暴にめくり上げた。
彼の名前を呼び続ける。
狂おしいほどに。
────ヨシキ、好きだ。…ヨシキ、ヨシキ。聞こえてるか?俺の声は、届いてるか………?
名残りのヒグラシたちが、その生の証を刻むかのように、今日も一斉に鳴いている。
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愛しているよ…
愛しているよ…
これから
例え 数えきれぬほどの季節が
廻り 過ぎ去っていっても……
《END》
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🍠ステキな秋にしましょうね🌰
どうもありがとうございました💜