『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。
帰ってきて真っ先に気が付いた。
───あれ?ヨシキが珍しい香水つけてる。
だけど、何系の香りなんだかわからない。
薔薇、、、もっと他の花?
フレッシュなフルーツたち?
いや、アールグレイ紅茶のベルガモットのようなスパイシーな香りも見え隠れしていて……何だろ、この不思議な匂い…?
…ヨシキ。
「は?」
素っ気ない返事に、一瞬ひるんでしまうけど。
…何の香水つけてんの?
「え〜教えなぁい!」
…すごい新鮮な匂いだよね。
「知らない♡」
…変えたの?
「だから教えないってばぁ!」
…なんだよー、ケチ。
ヨシキは、ベーっと舌を出して見せると、ダイニングルームを去っていってしまった。
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───なんだ?今のツンデレみたいの。
ひとり残されて、俺は考え込んだ。
どうやら我が家のお姫様は、香りで俺の気を引こうとしているようだ。
それは確かなのだけれど。
これが、彼(彼女か?)の仕掛けたゲームなら、乗るしかないかなと思う。
しょうがない。
もしここで俺がアクションを起こさなかったら。
大泣きされるか怒鳴られるか───、どっちにしたってたまったもんじゃない。
俺は決心して、椅子を蹴って立ち上がった。
冒険に出かける勇者みたい、、、ちょっと得意になった。
救い出すべきは、かぐわしい香りを纏ったままこの我が家 のどこかに隠れている、ツンデレお姫様で。
───でも、なんで香水なのかなあ。
考えあぐねていたら、ふと脳裏を、香水に関するひとつの名言がよぎった。
そうか、そういうことか…!と閃く。
体じゅうに香水を振りまいているヨシキの姿が、鮮やかに目に浮かんだ。
俺は静かにほくそ笑む。
お姫様のお目当てはわかった。
この直感は間違ってないはず。
…よしっ、待ってろよ!
ヨシキとの来たる戯れを想えば、足どりは軽やかだった。
そう、愛のチカラは、いつだって全てに勝利するのだ。