『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」(夢見る、想う)は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、どうぞよろしくお願いいたします。
ある意味笑。
ちょっとした肌寒さを覚えて起きてみると、俺は薄い毛布を一枚かぶって、あとは素っ裸なのだった。
そういえば昨夜はヨシキと寝て、そのまま眠ってしまったのだ。
隣へ目をやると、ヨシキが布団にくるまって、暖かそうに寝息を立てていた。
ある意味笑。
ちょっとした肌寒さを覚えて起きてみると、俺は薄い毛布を一枚かぶって、あとは素っ裸なのだった。
そういえば昨夜はヨシキと寝て、そのまま眠ってしまったのだ。
隣へ目をやると、ヨシキが布団にくるまって、暖かそうに寝息を立てていた。
───あれ?ヨシキもあのまんまなんだっけ?
そう思うと不安が走った。
何故かと言えば、ヨシキが昨夜のまま眠り込んだとしたら、最悪の事態もあり得るからだ。
昨日、俺は2回ほどヨシキの体内で射精した。
特に精液の量が多ければ、その刺激で───あまり言いたくはないのだけど───、腸の中のモノが一緒に漏れ出してしまう。
俺はうっかりして、ヨシキがセックスのあとトイレなりシャワーなりへ行ったのか見届けなかった。
その『最悪の事態』だけはやめてくれよ、と祈りながら、俺はヨシキの上の布団をズリズリと引っ張って、おもむろに彼の体から剥いでみた。
───よかった。無事だ。
シーツはどことなく湿っていたけれど、そこに、シミや汚れは見えなかった。
───ふぅ。
半分だけ布団を借りて、自分の下半身にかけてから、ヨシキをじっと観察する。
白くてなだらかな肩の女性的なラインのせいか、着衣のときのヨシキはいつももっと華奢に見える。
むき出しの彼の腕は、下手したら自分のそれより太いのではないかと思えるほど、硬く筋肉が引き締まってついているのだった。
…ヨシキ起きろよ。
そうは言ってみたものの、ヨシキが容易に起きるはずもなく。
…さっさと起きないと、こどもの日終わっちゃうよ?
そうなのだ。
今日は5月5日、端午の節句。
ヨシキは昨夜から、例の如く「こどもの日の柏餅」を買いに行くのを楽しみにしていた。
俺は、彼の後ろからうなじにキスするようにして、ヨシキを抱きしめた。
…ヨシキ。起きて。
「…ん~……」
…柏餅、買いに行くんでしょ?
「んん、うん。。」
…早くシャワーとメシ済ませないと。…売り切れちゃうよ?布団も干さなきゃ。
「うん。。。トシ…くすぐったい/////」
…ちゃんと起きた?
「うん…起きた」
ひとまずヨシキの目も覚めたようなので、俺はさっきから気になっていたことを訊いてみた。
…ヨシキ、昨日。
「うん?」
…シャワー浴びなかったの?トイレは?
「行ってない、、、行ってないよ」
…なんで? 俺、2回も中でぶっ放しちゃったから……ヨシキ大変じゃなかった…?
「大変?って、何が?」
…後片付けというか後始末というか。。。ヨシキ、垂れ流してるんじゃないかと思って、今ビビっちゃった。
「後始末……ねぇ~。」
ヨシキはそこで一旦言葉を止めた。
それから恥ずかしそうに笑って、こう言った。
「全然問題ないよ。トシが出してくれたのなんて、ちょっと頑張って我慢してたら、、、もうカピカピのサラサラに乾いちゃったから♡」
気色悪いこと言うなよ、と流した俺に、ヨシキは思いもよらないことを口にした。
「ごめんね。…けど、トシがずっとおれの中にいてくれたらいいな、とか思って」
…ええ?
「これでおれがさぁ、女の子だったら、赤ちゃんできたかな~…」
どうしてだろう、今度は簡単に流せなかった。
俺は言葉に詰まった。
未来永劫、叶うことのない望み。
ヨシキの胎内で、何を生み出すでもなく干からびていった、俺の精子の群れ。
それでも、昨夜のヨシキは、その精液を排出することを拒んだのだ。
必死で、彼自身の中に留めようと。
健気で、切なくて───……。
…ヨシキ。なんか今、…弱気になってる。。。?
「弱気ぃ??」
…ヨシキが女の子だったら、、、俺困るし…、てか第一、今日は男の子のお祭りなんだし。
「やぁだトシ、冗談だよ~。トシがくれたやつ出しちゃいたくなかったのは本当。けど赤ちゃん欲しいなんて思ってないもん、だいじょぶだってばぁ~」
ヨシキの表情は明るく見えた。
俺は、静かにヨシキの腰を撫でて抱きしめた。
彼のお腹に顔を押し付けて、キスして。
…ヨシキ。。俺はいつもヨシキの中にいるよ。赤ん坊は無理だけど、あとは全部、あげるから。
「トシ?」
…だから。もうそうゆうこと、言わないで。……つらい。
自分でも、今の気持ちを何と呼べばいいのか、わからなかった。
ヨシキが俺を大切に想ってくれていることは、いやというほど伝わってきた。
けれど、彼のその感情を、どう処理していいのかわからない。
「あっははは、弱気なのはトシじゃん」
ヨシキに笑われてハッとした。
そうかもしれない、弱気なのは、俺だ。
「ね~トシ~!上に来てよ、そんなお腹の方にいないでさ。おれが抱いてあげる~。」
そう思うと不安が走った。
何故かと言えば、ヨシキが昨夜のまま眠り込んだとしたら、最悪の事態もあり得るからだ。
昨日、俺は2回ほどヨシキの体内で射精した。
特に精液の量が多ければ、その刺激で───あまり言いたくはないのだけど───、腸の中のモノが一緒に漏れ出してしまう。
俺はうっかりして、ヨシキがセックスのあとトイレなりシャワーなりへ行ったのか見届けなかった。
その『最悪の事態』だけはやめてくれよ、と祈りながら、俺はヨシキの上の布団をズリズリと引っ張って、おもむろに彼の体から剥いでみた。
───よかった。無事だ。
シーツはどことなく湿っていたけれど、そこに、シミや汚れは見えなかった。
───ふぅ。
半分だけ布団を借りて、自分の下半身にかけてから、ヨシキをじっと観察する。
白くてなだらかな肩の女性的なラインのせいか、着衣のときのヨシキはいつももっと華奢に見える。
むき出しの彼の腕は、下手したら自分のそれより太いのではないかと思えるほど、硬く筋肉が引き締まってついているのだった。
―――・・・ ◇ ・・・―――
…ヨシキ起きろよ。
そうは言ってみたものの、ヨシキが容易に起きるはずもなく。
…さっさと起きないと、こどもの日終わっちゃうよ?
そうなのだ。
今日は5月5日、端午の節句。
ヨシキは昨夜から、例の如く「こどもの日の柏餅」を買いに行くのを楽しみにしていた。
俺は、彼の後ろからうなじにキスするようにして、ヨシキを抱きしめた。
…ヨシキ。起きて。
「…ん~……」
…柏餅、買いに行くんでしょ?
「んん、うん。。」
…早くシャワーとメシ済ませないと。…売り切れちゃうよ?布団も干さなきゃ。
「うん。。。トシ…くすぐったい/////」
…ちゃんと起きた?
「うん…起きた」
ひとまずヨシキの目も覚めたようなので、俺はさっきから気になっていたことを訊いてみた。
…ヨシキ、昨日。
「うん?」
…シャワー浴びなかったの?トイレは?
「行ってない、、、行ってないよ」
…なんで? 俺、2回も中でぶっ放しちゃったから……ヨシキ大変じゃなかった…?
「大変?って、何が?」
…後片付けというか後始末というか。。。ヨシキ、垂れ流してるんじゃないかと思って、今ビビっちゃった。
「後始末……ねぇ~。」
ヨシキはそこで一旦言葉を止めた。
それから恥ずかしそうに笑って、こう言った。
「全然問題ないよ。トシが出してくれたのなんて、ちょっと頑張って我慢してたら、、、もうカピカピのサラサラに乾いちゃったから♡」
気色悪いこと言うなよ、と流した俺に、ヨシキは思いもよらないことを口にした。
「ごめんね。…けど、トシがずっとおれの中にいてくれたらいいな、とか思って」
…ええ?
「これでおれがさぁ、女の子だったら、赤ちゃんできたかな~…」
どうしてだろう、今度は簡単に流せなかった。
俺は言葉に詰まった。
未来永劫、叶うことのない望み。
ヨシキの胎内で、何を生み出すでもなく干からびていった、俺の精子の群れ。
それでも、昨夜のヨシキは、その精液を排出することを拒んだのだ。
必死で、彼自身の中に留めようと。
健気で、切なくて───……。
…ヨシキ。なんか今、…弱気になってる。。。?
「弱気ぃ??」
…ヨシキが女の子だったら、、、俺困るし…、てか第一、今日は男の子のお祭りなんだし。
「やぁだトシ、冗談だよ~。トシがくれたやつ出しちゃいたくなかったのは本当。けど赤ちゃん欲しいなんて思ってないもん、だいじょぶだってばぁ~」
ヨシキの表情は明るく見えた。
俺は、静かにヨシキの腰を撫でて抱きしめた。
彼のお腹に顔を押し付けて、キスして。
…ヨシキ。。俺はいつもヨシキの中にいるよ。赤ん坊は無理だけど、あとは全部、あげるから。
「トシ?」
…だから。もうそうゆうこと、言わないで。……つらい。
自分でも、今の気持ちを何と呼べばいいのか、わからなかった。
ヨシキが俺を大切に想ってくれていることは、いやというほど伝わってきた。
けれど、彼のその感情を、どう処理していいのかわからない。
「あっははは、弱気なのはトシじゃん」
ヨシキに笑われてハッとした。
そうかもしれない、弱気なのは、俺だ。
「ね~トシ~!上に来てよ、そんなお腹の方にいないでさ。おれが抱いてあげる~。」
.。o○.。o○.。o○.。o○
俺はヨシキに言われるがまま、彼に身をゆだねていた。
ヨシキの腕の中は、大袈裟に言えば、熱かった。
「トシ~、早くしないと、もうお昼になっちゃうよね~」
…うん。
「ごはん、どうするの~?」
…その前に、布団干さなきゃなー。
「じゃあ起きる~?」
…起きたくない。だるい。
「ずっとこうしてる?」
…そういうわけにもいかないよね。
会話はしていても、話はちっとも進展していなくて。
それでも俺はじわじわと、ヨシキに癒されていくのを感じていた。
…柏餅、買いに行くんだっけ?
「それは行くよ~当然」
…水まんじゅうは食べないの?今年は。
「うん。今年は柏餅♡」
…そっかぁ。
「よもぎのがあったらそれにするんだ~、粒あんだっけ?」
…うん。。だったかな。
ヨシキがずっと、やさしく背中をトントンしてくれている。
俺はヨシキに言われるがまま、彼に身をゆだねていた。
ヨシキの腕の中は、大袈裟に言えば、熱かった。
「トシ~、早くしないと、もうお昼になっちゃうよね~」
…うん。
「ごはん、どうするの~?」
…その前に、布団干さなきゃなー。
「じゃあ起きる~?」
…起きたくない。だるい。
「ずっとこうしてる?」
…そういうわけにもいかないよね。
会話はしていても、話はちっとも進展していなくて。
それでも俺はじわじわと、ヨシキに癒されていくのを感じていた。
…柏餅、買いに行くんだっけ?
「それは行くよ~当然」
…水まんじゅうは食べないの?今年は。
「うん。今年は柏餅♡」
…そっかぁ。
「よもぎのがあったらそれにするんだ~、粒あんだっけ?」
…うん。。だったかな。
ヨシキがずっと、やさしく背中をトントンしてくれている。
…ねえヨシキ。
「ん~」
…まださー、このままでいい?少しだけね。ヨシキのこういうの、好き。
「眠くなったら寝ちゃっていいよ」
…うん。寝不足気味。
「昨夜頑張ってくれたもんね♡」
…頑張ってくれたって、別にヨシキのために頑張ったわけじゃなくて……俺の好き勝手しただけだよ。
「う~ん、、、そうかもだけど……、なんか、おれうれしかったの。トシが何回も、おれの中がキモチイイんだって言ってくれて」
…ん?いつだって気持ちいいよ? 俺伝えてないかなぁ。。。ごめん。
「いいのいいの!トシ昨日はほんと、よさそうだったもん」
だからヨシキは、俺の精液を洗い流したくなかったのかなぁと、俺は都合のいいように思ったりした。
…ヨシキ自身はどうだったの。そっちが大事でしょ。
「おれ~?おれはもう、、、え~と、昇天しないようにするので必死でした」
…それって、よかったってこと?
「も、ち、ろ、ん~!♡」
ヨシキが俺の背中をペチペチ叩いた。
照れ隠しなのだろうが、こちらから見れば単にかわいいだけなのだった。
…あー、ホントこうしてるの好きだわ。安らぐー。
「おれたち何年これやってるのかな~?裸の付き合いってやつ~」
…さあね。
返事をしてから、ふと思った。
今ふたりが裸であることは事実だけれど、こういうのは、普通で言ういわゆる『裸の付き合い』というのとは、意味が違うんじゃないか?
ヨシキはときどき、日本語が変だ。
□■□■□■□■□
背中をトントンしてもらっているうちに、甘い眠気が渦のように押し寄せてきた。
ヨシキの手のリズムは、決して規則的とは言えず……むしろ明らかに不規則だった。
きっと彼も眠いのだろうと思う。
一生懸命な俺の恋人に、感謝しなくては。
俺は安心して、目を閉じていた。
意識は薄れつつあった。
よもぎの柏餅を探しに。
────…今ではすっかり、体ばかり大人の関係になってしまった俺たちだけれど。
出逢ったあの日から変わったことなんて、本当は、何ひとつないんだ。
2017年5月5日 こどもの日。
今年も、東京の空は快晴。
《END》
遅くなってごめんね!
「ん~」
…まださー、このままでいい?少しだけね。ヨシキのこういうの、好き。
「眠くなったら寝ちゃっていいよ」
…うん。寝不足気味。
「昨夜頑張ってくれたもんね♡」
…頑張ってくれたって、別にヨシキのために頑張ったわけじゃなくて……俺の好き勝手しただけだよ。
「う~ん、、、そうかもだけど……、なんか、おれうれしかったの。トシが何回も、おれの中がキモチイイんだって言ってくれて」
…ん?いつだって気持ちいいよ? 俺伝えてないかなぁ。。。ごめん。
「いいのいいの!トシ昨日はほんと、よさそうだったもん」
だからヨシキは、俺の精液を洗い流したくなかったのかなぁと、俺は都合のいいように思ったりした。
…ヨシキ自身はどうだったの。そっちが大事でしょ。
「おれ~?おれはもう、、、え~と、昇天しないようにするので必死でした」
…それって、よかったってこと?
「も、ち、ろ、ん~!♡」
ヨシキが俺の背中をペチペチ叩いた。
照れ隠しなのだろうが、こちらから見れば単にかわいいだけなのだった。
…あー、ホントこうしてるの好きだわ。安らぐー。
「おれたち何年これやってるのかな~?裸の付き合いってやつ~」
…さあね。
返事をしてから、ふと思った。
今ふたりが裸であることは事実だけれど、こういうのは、普通で言ういわゆる『裸の付き合い』というのとは、意味が違うんじゃないか?
ヨシキはときどき、日本語が変だ。
□■□■□■□■□
背中をトントンしてもらっているうちに、甘い眠気が渦のように押し寄せてきた。
ヨシキの手のリズムは、決して規則的とは言えず……むしろ明らかに不規則だった。
きっと彼も眠いのだろうと思う。
一生懸命な俺の恋人に、感謝しなくては。
俺は安心して、目を閉じていた。
意識は薄れつつあった。
◇
ひと眠りしたら
ふたりで一緒に買い物に出よう。
ふたりで一緒に買い物に出よう。
よもぎの柏餅を探しに。
ヨシキ? ヨシキ?
俺の声は 聞こえているだろうか。
◇
────…今ではすっかり、体ばかり大人の関係になってしまった俺たちだけれど。
出逢ったあの日から変わったことなんて、本当は、何ひとつないんだ。
2017年5月5日 こどもの日。
今年も、東京の空は快晴。
《END》
遅くなってごめんね!