『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。
「チュウして?」
…うん。
「、あ」
…んん。ふ…っ。
「トシ好きだよぉ」
…うん。……おれも、好きだよ。
「あっ!ん、キモチいい……もっと!」
…待って。
「トシ、もっと。もっとだよぉ」
順繰りに、ヨシキの要求に応えていく。
…ここ感じるでしょ。ほら、ここも。
「あっ!あぁ~!」
「や…っ、く……ッ!」
「は……ぁッ!いっちゃう!!」
ピストン運動を繰り返している腰と、支えている腕がしんどい。
それでも覚悟を決めたんだからと、ひたすらヨシキに奉仕する。
永遠に続くかと思われる仔猫ちゃんとの情事。
もう何回彼をいかせたろう?
数えるのさえ嫌だ。
普段ならせいぜい3ラウンドくらいで終わるのに。
朦朧とする頭で、俺ははたと、いいことを考えついた。
…ヨシキ、腕、縛るよ。
厚手のスポーツタオルに手に取る。
「ん?なんで。トシに触れなくなっちゃう」
…いいから。
「痛いことするの」
…まさか。しないよ。
…ヨシキが引っ掻くからできないように結わえとくの。
「ん~。。」
実際、俺の体はヨシキのせいで引っ掻き傷だらけだった。
背中とか胸とか、いつだって我を忘れると爪を立てるのがこのネコさんの癖だけれど、発情中は半端ない。
体じゅうに傷ができてしまう。
商売道具の、首から上を防備するのが精一杯だ。
ただ、別にヨシキは故意にしているわけではなくて、俺を求めるあまりなのはわかるから、むやみに責められない。
今日のタオルはね、特別な意味なんだ。
そして、最後の戦いに挑む。
外ではまだ、猫たちがにゃぁにゃぁと甘ったるい声を出している。
…ヨシキが。次にイったらおしまいだよ。
「え~。そんな~」
約束を取り付ける。
ここが重要なのだ。
ヨシキの胸に唇を這わせると、ビクン、ビクン、と彼の躰が反応する。
もう、乳首とその回りが、すっかり鮮やかなピンク色に染まっていた。
「は…っ……んんっ!」
「なんかさあ、トシ……すごいね……?」
…はぁ…、はぁ…っ、そ…う……?
当然だ。
これでヨシキをイかせれば、俺には安眠が訪れる。
本当に、息が苦しい。
しかしこれが俺の腕の見せどころで。
「あああ~~~!トシ、いきたい!!」
…んん?……だめ。
「でも、出ちゃうよ!」
出ちゃうって?
何を言ってるんだろう。
…ならいいよ。出してみ。
「あ、んんっ………え??」
「……あ。トシのいじわる~!!」
ヨシキがようやく、気付いた。
両手首をタオルで縛られているから、彼は自分で自由に達することができないのだ。
タオルごと俺に掴まえられて、ヨシキの躰は震えていた。
「も、もう、いきたい!許してよ!」
「トシ限界だよ許して! 射精 したい!」
とうとう、ヨシキがまた泣き声になった。
…もういい?満足したの?
俺はわざと意地悪く、彼に訊ねる。
「し…っ、した、したよ!お願いいかせて!」
涙を流し、身をよじって絶頂 を懇願するヨシキの姿は壮観だった。
───俺ってやっぱりサディストなのかな?
自分の性器 をヨシキに深く突き立てたまま、俺はヨシキを抱きしめて、彼のそれに手をやった。
「は、やく…っ!」
ヨシキの顔は、感情が高ぶっているのと、極限まで高まった快感と、それから、この状況への羞じらいとで、真っ紅だった。
覗き込むと、悔しそうにそっぽを向いて、唇を噛んだ。
…はい、いいよ。いきな。
俺が軽くそれに触れただけで、ヨシキは悲鳴を上げた。
続けて、キュッとしごくと。
「あ、あ。あーーーーーー…ッ!!!」
激しいオーガズム。
彼のお腹の上に、勢いよく精液がほとばしり出る。
俺は一瞬見とれてしまった。
…大丈夫?
ちょっといじめすぎたかなと思いながら、俺は、ヨシキの精液を人差し指ですくった。
そして、最後に悠々と、自分もオーガズムを迎えた。
…ヨシキ……好きだよ。
快感に酔いつつ呟いてみる。
けれどその言葉は、残念ながらヨシキに届きはしなかった。
彼はすでに意識を失っていたのだ。
───ふぅ。
戦いの終わり。
…とんでもないネコさんだよ、全く。
俺はヨシキの精液をもう一度指につけると、ぺろっと舐めた。
いつもの味、いつものにおい。
ヨシキはいつ目覚めるだろう?
今夜はこれで、もう大人しく眠ってくれるだろうか。
時刻は午前3:30を僅かに過ぎている。
───疲れた。
満身創痍でベッドに倒れ込んだ。
体が汗でびっしょり濡れていたけれど、とてもシャワーを浴びに行くだけの力がない。
ぐったり横たわったベッドで、ぼんやりと視界に入ってくるヨシキの姿を見ている。
目を閉じても、やはり気になってしまって、再び瞼を上げた。
───仔猫ちゃん…か。
自分の体がこんなことになっていても、眠っているヨシキを綺麗だと思わずにいられなかった。
寝乱れ、逝き果てた姿に、改めて欲情しそうになる。
…まずいだろ、いくら何でもそれは。
思わず苦笑して、ベッドの向こう側に眠っている彼の手を握った。
あたたかい。
───ほんとにねぇ。寝顔は可愛いのにね。
もうちょっとだけ加減してくれたら、と思う。
盛りのついた猫とはよく言ったもんだ。
…容赦ないからなあ。
ヨシキの顔を見ながら、もう一度ため息をつく。
───さて、と。
そろそろ俺も休んでおかないと、あとが怖い。
ふと、家の外に耳を澄ました。
しんとして何も聞こえない。
猫たちも、逢い引きを済ませて眠ったようだ。
…ヨシキ、また明日ね。おやすみ。
しっかり布団をかけてやると、自分も毛布にくるまった。
それから、思い切って枕元のライトをオフにした。
真っ暗な闇。
仔猫ちゃんの夢に、俺は出てくるんだろうか?なんて考えたりする。
けれど、すぐに途方もない疲れがどっと押し寄せて、俺を眠りへと追い立てた。
…寝よ。………おやすみなさい。
いよいよ、春本番。
猫たちの恋の季節も本番。
もう間もなく、桜が満開になるだろう。
《END》
お疲れさまでした🐱ありがとうございました💗